組合信用事業の始まり

4月の夜、フィリピンから電話が突然かかってきた。

 

Rさん「やあ元気かい?実はそろそろ海藻栽培の季節なんだけどみんなお金がなくて、融資プログラムとか立ち上げたらいいなって話をしていたところなんだ」

 

僕「へえ、いいんじゃない?こっち側でもそういうのができたらいいなって思ってたところなんだ。少しぐらいなら資金はあると思うよ。」

 

彼が言っているのは、海藻業に必要な初期投資、種やネットを買うためのお金が欲しいということだった。すでに彼から海藻業についてベーシックなことを学んでいて、初期投資の大切さを知っていた僕からしたら、わからない話ではない。問題はこの後だ。

 

Rさん「それは良かった。だいたい一人当たり、そうだな2万phpあれば十分だな。この話をみんなにしたら、今25人ほど組合に入りたいって人がいるんだが、大丈夫か?」

 

このときすでに僕の頭のなかは??でいっぱいであった。1phpはだいたい2.5円、2万phpは5万円で、25人だと...125万円?何を言っているんだ、と。だってこの漁業組合の1年間の予算は100万円なんだべ

 

 

僕「ちょっと待って欲しい。こんなことを言うのは億劫だけど、、そんなにお金はないと思う。」

 

ここは正直に言う。だってないんだもん。

 

Rさん「5月の頭くらいで大丈夫か?」

 

なぜか話を聞かないRさん。

 

これである、フィリピン人のかわからないが、話の通じないところ。こっからが交渉の始まりだ。

 

僕「もう一度言うけど、その額は用意できない。年間予算から考えて、10万php程度が限度だと思うよ。あと、五月もきつい。ちゃんと融資するなら、契約書だとか規約が必要になるからその話も、NPOを交えてちゃんとやろう。」

 

ここで自分の要求を一気に言う。正直自分は駆け引きとか苦手なので、とりあえず伝えることを伝えちゃうのがベストだと思っている。ちゃんと説明すればわかってくれるだろう、と。

 

ちなみにここには2つジレンマがあった。

一つは、コミュニティ「支援」のジレンマ。これは彼らのプロジェクトで、自分はあくまで支援側、だから僕が何か提案をすることはせず彼らの提案を待たなくちゃいけない。この信用融資事業は初めから考えていたことではあった。だけどこっちから提案できずに、ちょくちょく会話の中で種をばら撒くことしかできない。提案待ち、、そしてついにきた提案がこれ。自分が最初から提案に関われないため、どんな提案が来るかわからないのが「支援側」の難しさだろう。

 

2つ目は、「情報共有」のジレンマ。これは個人的に反対なんだけど、

助成金総額は彼らに伝えないことになっている、というNPOとのお約束。

どうしてかっていうと、、助成金のうちの幾つかはNPOの運営や僕の渡航費に回されるから。100万円のうち20万くらいかな?これでも普通のNPOと比べては小さいと思うけど、やっぱり現地の人からしたら嬉しくないのか?

でも、本当に正しい形はちゃんと全て伝えて理解してもらった上で、一緒に進めることだと思う。まあとにかく伝えないのが今回の方針。なので、あっち側は、僕たちがどれだけお金を持っているか知らない。だからこんな120万円の提案が生まれるんだ。

 

兎にも角にも、こんな出だしで信用融資は始まった。

 

まずは一人当たりの金額を1万phpにして、

組合人の人数を15人まで減らしてもらった。

 

ここまでは相手の譲歩。

 

こっちは、5月の頭スタートを目指して、規約・契約書作りを急ピッチで進める。

利子やら返済期間、返済計画、罰則規定とかね。

 

これがこっちの譲歩。

 

今思い返すとこの時期が一番ギスギスしてたなあ、、、

Rさんは今更みんなに変更だなんて言えないっていうし(そもそも勝手に決めちゃダメでしょ)

NPOはこんなに早くは実現無理だっていうし、

 

まだ組合の運営体制すら整っていないのにこのアリさま。

 

僕は静かに

情報共有をこれから増やすこと、早めに相談してもらうことを学びとしてえれたなあ

と一人納得してたなぁ